223: 1/4 21/06/06(日)01:47:14 ID:Mk.g8.L1
コロナ以前の話。

うちの会社が○○社に大きな案件を発注した。
○○社と仕事するのはそれが初めてだったので、キックオフで両社のプロジェクトチーム全員が顔を合わせた。

キックオフの最中、○○社の男性社員(以下A男)が、なんかやけに私の方を見る。
最初は気のせいかと思ったが、明らかに私をじろじろ見ている。
これで私が若い美人なら『美しい私に見とれてるのね。うふふ』とかうぬぼれるんだが、私はアラフォーのおばさんでA男は二十代後半。
見とれられる理由はない。
キックオフの後、お手洗いに行って髪型や化粧がおかしくないかチェックしたけど、特に問題はない。
(何だったんだろう)
と思いつつ、仕事を再開したら、A男からメールが来た。
メールアドレスは、名刺に書いてあったから、それを見たと思う。

以下、メールの内容。

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こんなところで再会できるなんて、思わなかった。
やっぱり運命って、あるんだね。
俺たちは一つの家族になる、それが天の意志なんだよ。
私田さん(私姓、仮名)、俺はあなたの心ない仕打ちを許そう。
長い孤独な時間が、十分に私田さんへの罰になっただろうから。
すべてを水に流してあげるよ。
大丈夫、怖がらなくていい。
このチャンスをしっかりとつかむんだ。
ただ、自分の気持ちに素直になるだけで良い。
俺も父も、またあなたと暮らせる時を待っている。
さあ、一歩を踏み出そう。


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224: 2/4 21/06/06(日)01:47:21 ID:Mk.g8.L1
メールが手元にないから記憶から再現したけど、大体こんな感じだったと思う。
現物はもっとだらだらと長かったかな。
とにかくやたらと『運命』 を連呼したり、上から目線で『許してやる』とか『家族』とか書いてた。

上司に相談したところ、
「知り合い?」
と、聞かれた。
私「いえ、キックオフが初対面です」
上司「じゃあ、人違いか」
私「でしょうね。大体年齢が離れすぎてますよ」

で、上司と相談の上、こんな感じのメールを送った。
「どなたかとお間違えではありませんか。
私があなたと会ったのは、キックオフが初めてです。
それとこのアカウントは仕事用ですので、私用メールはご遠慮ください」

これでA男が引くなら、『今回は流そうね』って話だった。

A男からの返信がこれ。

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嬉しすぎて素直になれないんだね。
でも、そんな風に人をじらしていいのは、若いうちだけだ。
もういい年なんだから、身の程をわきまえなよ。
それと、仕事用のアドレスだからメールを送るなと書いておいて、私用のアドレスを書かないってのはなんなんだ。
そういう気の利かないところ、変わってないね。
だから俺にしょっちゅう注意されることになるんだよ。
罰として、今回のプロジェクトで~(いろいろ書いてあったけど、まとめると『契約金を3割上げろ』みたいな内容)すること。
これだけで俺と父に許されて受け入れてもらえるんだから、安いもんだろ?
こんなことは言われなくても自分から申し出ることなんだけどね。
俺が優しくてきちんと教えてもらえてよかったね。
それと個人連絡先もちゃんと教えるように。

あなたのA男より。


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225: 3/4 21/06/06(日)01:47:35 ID:Mk.g8.L1
こっちも記憶からの再現だけど
『身の程をわきまえなよ』
と、
『あなたのA男より』
そして
『俺が優しくてよかったね』
は本当に書いてあった。
悪い意味でインパクトが大きかったから、よく覚えている。

二通目のメールを上司に見せたら、難しい顔をして
「そのメール、二通とも俺に転送して」
と言われた。
転送したら、上司は部長に電話をかけてアポ取り。
ちょうど今空いてるとのことだったので、二人で会いに行って、メールを見せて相談した。
部長はその場で○○社に抗議の電話を入れてくれた。

○○社からは即日で謝罪に来たよ。
謝罪に来たのはA男と、プロジェクトリーダーと、専務の人。
部長、すごく怒ってくれた。
「うちの女性社員になんてメールを送るんだ!
お前らのところ、社員教育はどうなってる!」

って。
プロジェクトリーダーと専務の人は全力で謝ってくれたんだけど、
肝心のA男が悪いと思ってないようで
『ちっ、うっせーな。反省してまーす』
な態度。
挙句に私をにらんできたりする。

結局、○○社に発注した案件は、他社に発注することになった。

で、A男が私にあんなメールを送ってきた理由なんだけど、
私はA父の元後妻と間違えられていた。

A父は早くに奥さんと死別。
男手一つでA男を育ててきたが、A男が13歳の時に後妻と再婚したそうだ。
A男は後妻とは仲が悪くてしょっちゅうもめてた。
そのため後妻は出て行ってしまって、それ以来A男と父親の仲もギクシャクしてるらしい。

226: 4/4 21/06/06(日)01:47:50 ID:Mk.g8.L1
私姓は、珍名とはいかないけれど、ちょっと珍しい姓。
それが後妻さんの旧姓と同じだったので、A男は
『同姓で同年代だ。
この人は元後妻に違いない!』

と思って、あんなメールを送ってきたらしい。

A男に
「一度は俺の母だったのに、なんでこんな酷いことするんですか!」
と涙目で被害者面で叫ばれたので、
「だから私はあなたとはキックオフが初対面だって言ってますよね?
大体私は結婚してて、姓は夫のものに変わってますよ。
旧姓は田中(仮名、ありふれた姓)です」

と答えたら、A男は
「えっ」
と言って絶句。
専務の人が慌ててA男の頭を押さえて下げさせ、プロジェクトリーダーと一緒に必死で謝ってた。
正直、ちょっと同情した。
社員教育不十分ったって、こんなどでかい地雷が埋まってるなんて、普通思わないよなあ。

気になったので元後妻さんのファーストネームも確認した。
A男は後妻さんのファーストネームを覚えてなかった。
A父は元後妻さんを、愛称で『みっちゃん(仮)』と呼んでいて、私のファーストネームは “美由紀(仮)” みたいな感じ。
で、余計に元後妻さん認定されたらしい。

後で上司に
「後妻の顔も覚えてないのに、旧姓なんてよく覚えてましたね」
と言ったら、上司は
「嫌がらせのために、ずっと旧姓呼びしてたんじゃないのか」
ああ、それなら旧姓だけは覚えていた理由がわかるし、離婚後に父親との関係がこじれるのも納得だ。



Those Crazy Fallin Down Things
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