824: 名無しさん@おーぷん 2017/01/21(土)01:06:57 ID:mx0
むかしむかし…突然の病気で若くして入院手術をすることになった友人がいた。
「入院費まではよかったが、その後しばらくの生活費がどうにもならない」
と、少額だが借金を申し込まれた。
入院が思いの外長期になってしまったため仕事も切られてしまったようだった。
俺にとって恩もあった人物だったので、少額だったこともあって
「返すのは100年後でもいいから」
と言い添えて貸した。

友人はその後苦労に苦労を重ねた。
持病もちとなったことが災いし、再就職にも数年を要した。

その間にも俺のほうにもお金に関して困ったことが数度あった。
その度
(あのとき貸したお金があったらば)
と考えたりもしたが、「100年後」と言った手前こちらからは催促できずにいた。
あわよくば
(察してくれないものか)
と考えていたと思う。

そのうち俺の中で友人は次第に【貸した金を返さないやつ】になっていった。
まあ、実際そうなんだけど。




826: 名無しさん@おーぷん 2017/01/21(土)01:09:00 ID:mx0
つづき。

書き忘れたが、この友人は人あたりもよくコミュニケーションの化け物みたいな人物なのだが、自分から誰かに連絡をとると言うことを滅多にしない人。
そうしなくても相手のほうから歩み寄ってくるという人のほうが多かったのだろう。
不思議な魅力と人望のある人物。
そんなだから、俺が連絡をしないと1ヶ月でも2ヶ月でも、簡単に疎遠になってしまう。
結局、前記みたいな感情もあって本当に次第に疎遠になってしまった。
(何だよ)
とも思いつつ、なぜか意地にもなってしまってそのまま数年の時間が過ぎてしまった。

さて数年後、本当にフとした思いつきで彼に連絡をとることにした。
いつもの店にいつもの時間で、まるで昨日別れた友人のように自然に約束をとりつけた。
本当に自然に、「よう!久しぶり!」「お前どうしてたんだよ!」と言う反応もなく、
「うん。どうした?○○に○時でいい?OK」
こんな感じ。

勢いとしか言いようがない。
その席でついに言ってしまった
「あのときのお金を返してくれないか。どうしてもかつ緊急に必要なんだ(嘘)」
返ってきたのは
「ああ、わかった」
と二つ返事。

その翌日には色付きでお金は返ってきた。
「さすがに色は受け取れぬ」と言うも、
「それは利息のようなものだ」
と。
結局受け取ってしまう。

827: 名無しさん@おーぷん 2017/01/21(土)01:10:29 ID:mx0
これで最後。

謝られてしまったよ。
「実は返す用意はコツコツと整えていた、いつ『返せ』と言われてもいいようにと封筒に入れて、貧しい生活で困っても使ってしまわないようにと管理して。
でも本当は待たずに申し出るべきだった、『100年後』という言葉に甘えてしまったな」

と。
確かに、受け取った袋は少しヨレヨレだった。

俺はと言うと感情の整理がつかないでいた。
もとはと言えば手放すつもりで人助けのつもりで差し出したお金。
それに後ろ髪ひかれるみたいにまるで拗ねたように何年も連絡を断っていたこと。

いや、特に俺が間違っていたとは思わない。
貸したものが返されないのはふつうに腹がたって然るべきことだと思う。
彼の言った「『100年後』と言う言葉に甘えた」と言うのも、それはふつうに落ち度だろうと。

でも言うなればお互い様だと思った。
だから何も問わないことにした。
連絡を断っていたことの理由も話さず。
と言っても今日まで追求されることもなかったけど。


友人との交流はそれから何事もなかったようにふつうに再開され、それからさらに数年後の今、お互いすっかりオジサンになってしまい、持病をもった友人も既に早過ぎるリタイア生活となった。
でもいろんな人に友人は支えられていて、独身ながら幸せそうだ。



リターン (幻冬舎文庫)